No.67

豊年満作を祈りつつ踊る「八太郎おしまこ」

「今年世中良い。みろく世中。米一石、粟二石」。
稲穂が頭を垂れるように、しなよく踊る、輪になって踊る。
青森三大おしまこ、八太郎おしまこにまつわるお話。

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木村鉄男
取材・文 室谷楓香

 「今年世中(よなか)良い。みろくの世中。米一石、粟二石」
 2人1組の唄い手が2組、この唄を伴奏なしで繰り返し掛け合い、丸い輪になって踊っていく「八太郎おしまこ」。その保存は地域ぐるみで取り組まれている。「おしまこ」とは旧南部藩領内各地で伝えられてきた盆踊りのことである。
 八太郎地区は昔農村であったらしく、豊年満作を祈り、八太郎おしまこが踊られてきた。田名部・白銀と並ぶ青森三大おしまこの一つだ。
「稲穂が頭を垂れているようにね、こうやって手を使うんだよ。豊作だと稲穂が垂れるでしょ。指先を稲穂の形にして、腕を肩から上に上げないようにするのが八太郎おしまこの特徴だよ。」
と八太郎おしまこ保存会の会長・木村鉄男さんが教えてくれた。
 保存会では、1ヶ月に2・3回程集まって練習し、ショッピングセンターで行われる祭りや、公会堂で披露している。保存会では以前、八太郎おしまこの継承を口伝えでやってきたが、今は町内会の資料に掲載し書面での保存や映像での記録を残すなど、郷土芸能継承の必要性をうったえるようになった。郷土芸能を残していくためには、思っていても何も始まらない。そこで、木村さんは動き出した。何事も一から始め、流れに乗せるまでが大変だ。試行錯誤を繰り返した。
 現在八太郎おしまこには決まった衣装がない。お母さんたちが持っている浴衣を使用したり、多く持っている方から浴衣を借りるなどして踊っている。しかし、「八太郎おしまこ独自の衣装があると気持ちも高まってくるのでは」という考えで、今は衣装を作るための補助金を申請しているという。みんながおそろいの衣装で踊る姿を想像すると、わくわくする。
 また、人数が少ない唄い手を絶やさないようにと、木村さんがカラオケ好きのお父さんたちを集めて、唄い手の育成を図ったりもした。しかし、実際に歌ってみると、どうも男性では歌えない音程でうまくはいかなかった。他にも木村さんは、町内会に保存会の活動に必要な費用の補助を掛け合ったり、八太郎おしまこの指導者を唄い手・踊り手に役割分担し練習するなど、先頭に立って保存会を運営している。
 二年前、保存会のメンバーで八太郎おしまこの方のお宅から昔のビデオテープが出てきた。そこには木村さんのお母さんも映っていた。そのテープから「十六足(じゅうろくあし)」という踊りがあったことが判明した。岩手や三戸には「十二足(じゅうにあし)」という踊りがあるが、この十六足は、八太郎地区にしかない、八太郎地区発祥の踊りである。名前の通り、足の使い方に特徴があるらしいが、はっきりとした由来はわかっていない。この十六足もここにしかない貴重な財産だ。これから保存会は八太郎おしまこと十六足の両方を保存していく方針だ。
 郷土芸能を人から人へと伝えていくことは、「十六足」のように途中で途絶えてしまったり、後継者を育成しなくてはならなかったりと、時間と手間がかかる大変な苦労を要するものだ。だからこそ、保存会を運営する木村さんに尊敬の念を抱くと同時に、郷土の芸能を残していこうとする八太郎地区の住民ではない私でさえ「協力したい」と思ってしまう。
 農家の豊作への祈りである「八太郎おしまこ」、そして新たに発見された八太郎地区発祥の足運びが独特の「十六足」。それらがこの先ずっと後世にまで残ってほしい。そう思った。
「今年は豊作だ。すばらしい世中。米一石、粟二石」



取材に応えてくれた方

木村鉄男(きむらてつお)/プロフィール
1944年八戸市八太郎生まれ、25歳まで八戸に住む。その後転勤で60歳まで岩手・北上で勤務。定年後八戸に戻り、八太郎の町内会長を務める。現在は根岸地区の連合町内会会長や、八太郎おしまこ保存会の代表を務め、地域のネットワークを大事にしながら芸能の継承に力を入れている。

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取材と文

室谷楓香(むろやふうか)/プロフィール
八戸高校1年生。山岳部に所属。趣味は絵を描くこと、特技はギター。美術と生物の授業、部活を楽しみに毎日生活している。それがない日は・・・とりあえず笑っていよう・・・。

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