No.56

時代から時代へ伝わる本を愛する心

明治時代、貧しさから脱却するために、本を読み、
知を育む文化を根づかせる大切さを呼びかけた八戸青年会。
それが日本の図書館の先駆けであり、本のまち八戸の原点となった。

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岩岡順子
取材・文 瀬川征吉

 「郷土を愛し文化の高いまちにしましょう。」この一章は何か集いのあるたびに、私たち八戸市民が唱和する市民憲章、最初の一章節だ。ここの一章が生まれた背景には、日本でも先駆けといわれる「八戸市立図書館」の存在がある。

─ 国内でも先駆けの図書館 ─
 図書館の歴史は1874年(明治7年)6月の八戸書籍縦覧所の開設に始まる。これは八戸城の物見やぐらを書物仲間の大仲間である旧藩士逸見興長が南部家との折衝にあたり、払い下げを受けて開設したものだった。由緒ある木造建築は堀端町から鷹匠小路に移築され、1913年(大正2年)から、1929年(昭和4年)に堀端町に市立図書館が開設されるまで八戸町立図書館として利用された。1964年(昭和39年)の正月、飛び火を受けて残念ながら焼失した。

─ 初期時代(堀端町)─
 1929年(昭和4年)5月に3町1村が合併し、51,500人ほどの八戸市が誕生。その時の図書館は、旧八戸小学校の講堂を再利用したものだった。これが八戸市立図書館の初館で、33年間利用され市民の文化力向上に役立った。現在その建物は、国宝の鎧兜がある櫛引八幡宮に移築され「明治記念館」として保存活用されている。

─ 二館目時代(堤町)─
 市民人口の増加と共に稼働率が高まり、1962年(昭和37年)に堤町に二館目の図書館が平屋で新築された。当市出身の芥川賞作家・三浦哲郎が帰省するたび、作品の資料調べに通ったのは、この図書館のこと。作品の中にそれとなく触れられている。
 ここも蔵書数が多くなったことと、十勝沖地震の影響をうけたことで20年余り使用して閉館となった。近年取り壊されるまで、更上閣別館として活用された。

─ 三館目の今(糠塚・下道)─
 現在の長者地区に立てられた図書館は、1984年(昭和59年)春に市立として三館目。秋山市長時代に新築開館したものだ。かれこれ30数年使用されてきた今の図書館も、市民の利用率の高さと共に、年々蔵書数が増えて、館内の書棚は満杯の状態。
「数年前から手狭感はいなめない」と職員の岩岡順子さんは言う。そして「やはり八戸の図書館が誇れることは歴史があること。藩政時代に藩自体が豊かでないことから、藩士たちはお互いに本を貸し借りする「書物仲間」の組織をつくり、その仲間達で明治時代初めに書籍縦覧所を開いています。」
「で、もう一つ忘れてならないのは、八戸青年会のこと」と岩岡さんは加える。八戸青年会は湊要之助、北村益(ます)によって明治22年2月に創設され、20年余り活動している。旧士族の子弟の教育に努め、八戸周辺の人材育成を図った。1883年(明治16年)頃から全国的な不況となり、各地の図書館が財政難のため相次いで閉館していく中で、1880年(明治13年)に書籍縦覧所に併設された町村立の八戸書籍館も1887年(明治20年)に閉鎖となった。しかし、八戸青年会図書局が書籍館の蔵書を受け継ぎ、1911年(明治44年)まで私設図書館として運営を継続してくれたことにより、途切れることなくその蔵書を伝え続けてくれた功績は大きい。
 人から人へ、時代から時代へ、八戸の人たちは本を愛し大切にしてきた。脈々と受け継いできた文化尊重の気風は、この地の伝統として「利用率の高い図書館」「本のまち八戸」として注目を集めている。


注)北村益の長男・北村小松は脚本家、小説家として有名。父親の益は八戸町町長や消防団の組頭を務め、町の近代化に尽力した。



取材に応えてくれた方

岩岡順子(いわおかじゅんこ)/プロフィール
1959年生まれ。八戸市立図書館勤務9年目、それ以前は保育士をしていた。図書館では歴史資料グループに所属し、レファレンス業務や郷土資料の購入、登録、整理など郷土資料や古文書等に関する業務に携わっている。

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取材と文

瀬川征吉(せがわせいきち)/プロフィール
72歳、週刊八戸編集長(市民ガイド八戸協会代表)。趣味は1.絵葉書の収集と絵葉書を作ること、2.近代八戸の新旧の街並の移り変わりを写真で記録すること、3.市民ガイドとして観光地八戸の歴史、文化などをお客様に紹介すること。

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