〈八戸市美術館連携〉AOMORI GOKAN アートフェス 2024「つらなりのはらっぱ」共通企画 栗林隆《元気炉》レジデンス
はっちでは美術館などの公共施設と連携し、市内で活動するアーティストの滞在制作の支援も行っています。
今回ははっちに滞在し、八戸市美術館で制作を行ったアーティストの活動報告をお届けします。
-----------------------------------------------
2024年8月16日から22日まで、アーティストの栗林隆さん、栗林さんと共に活動するCinema Caravanの代表であり映像作家の志津野雷さん、音楽家の辰田翔さん、西山なおきさん(以下、栗林さんチーム)が、作品の設営やイベント開催、撤収のため、はっちに滞在しました。
今回、AOMORI GOKAN アートフェス 2024「つらなりのはらっぱ」(以下、アートフェス)の共通企画として、栗林さんの作品《元気炉》が5館を巡回していました。
開催館である5館は、「青森5館連携協議会」に参加している、青森県立美術館、青森公立大学国際芸術センター青森、弘前れんが倉庫美術館、十和田市現代美術館、八戸市美術館です。
栗林さんは、空間の内と外、自然と人間の間など、あらゆる時代や場所に存在する「境界」の意味を問い直すような作品を制作してきたアーティストです。
今回巡回した《元気炉》は通常、屋外で展示され、原子炉の形の構造物の中に薬草の香りを帯びた蒸気を充満させた空間を体験することができます。八戸市美術館では、従来の展示方法とは異なり、5館で唯一スチームを発生させない、屋内での特別展示となりました。
八戸市美術館での会期は8月18・19・21日。
16日にトラックを搬入し、17日に設営作業を行いました。
直径約6.5メートル、高さ約5メートルと大型な本作は、細かくパーツが分かれています。スタジオの空間を最大限使ってパーツを運び込み、男性8人ほどで組み立てました。
設営中、IBC岩手放送「じゃじゃじゃTV」の生中継が入り、栗林さんご本人に作品について語っていただく場面もありました。
午前9時頃から16時頃までかけて、無事作業終了。
スタジオ内では、過去に栗林さんチームが参加した「ドクメンタ15」(ドイツ/カッセル/2022年/Cinema Caravan and Takashi Kuribayashiとして)の映像作品 "Beyond documenta"(映像:志津野雷、音楽:辰田翔)も、作品と共に展示されました。
展示初日の18日。入口には、栗林さんの手書きのメッセージが添えられた看板が。
この日はさっそく沢山の人が作品に興味を示し、スタジオが賑わっていました。中でも印象的だったのが、作品の中をぐるぐると走り回っていたお子さん達でした。どうやら、音楽が流れる中にライトアップされた造形物がある光景が、子どもたちの好奇心をくすぐったようです。
この作品は、スチームを稼働する人、スチームを浴びる人、案内する人、ただそこにいる人、鑑賞する人、作者や設営者など、さまざまな人が行き交う場となっていることも、テーマのひとつとなっています。子どもたちが作品内で走り回る姿は、作品と語らっているようにも見え、そこに作品と人の間のコミュニケーションも感じられました。
さて、この日は夜19時から、イベント「Aomori GENKI-RO Trip at 八戸市美術館」を開催しました。
このイベントでは、前述の映像作品が八戸スペシャルとしてアレンジされ、音楽家・辰田さんと八戸の郷土芸能とのコラボによるライブを堪能できます。
館内には特設のバーが、マエニワにはピザやコーヒ、軽食といった飲食店が並び、作品と共に音楽と食を楽しめる夜となりました。
ちなみに、特設バーは田名部酒販さんによるもので、ハーブやスチームに関連したお酒を提供してくれました。
どれも香りが高いけれど飲みやすく、ついつい飲み過ぎてしまいそうでした。
作品の中心部がスチームを焚く空間なのですが、八戸市美術館ではスチームを発生させないので、中で佇んで作品をじっくりと感じることのできる空間となっています。イベント時には、ここでお酒を飲んだり、ライブや作品について話したり、憩いの場となっていました。
翌日は午前中に、志津野さんが美術館周辺を撮影しました。
実は今回、志津野さん5館での巡回展示やイベントの様子を撮影し、一つの映像作品として制作するそうです。
展示だけでなく、1つの作品となることで、5館をつなぐ作品となった《元気炉》でした。
無事展示最終日も終え、22日には撤収作業を行いました。
設営にはほぼ終日かかりましたが、撤収はほんの2時間足らずで終了。
あっという間に元気炉との別れの時間が来て、寂しい気持ちが拭えませんでしたが、この後、十和田市現代美術館、弘前れんが倉庫美術館と、巡回を続けています。
志津野さんの映像作品には、各館での様子が納められるそうなので、公開時にはぜひ、各館の個性を活かした展示方法やイベント内容をご覧いただけたら嬉しいです。