No.51

八戸産いわしにこだわった八戸の煮干し

「八戸のいわしだけが、この風味を出せる」。
そのために妥協を許さず、厳しいまなざしで見極める。
うまい煮干しづくりにかけるこだわりと情熱がそこにある。

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中道栄治
取材・文 高森栄子

 八戸は海と人の距離がとても近いと思う。風にのってやってくる磯の香りを感じながら生活している。初めて八戸に来た友人に驚かれた。慣れてしまった私は全くわからないのだが。その友人に見せてあげたいと思う景色に最近出会うことが出来た。グランドほどの広い敷地に広がる一面の銀世界。太陽の光を浴びてキラキラ輝くいわしのじゅうたんだ。

 その景色に出会えるのは、八戸の海沿いの市川町の中商さんの工場。地元の煮干しを絶やさないようにと、「八戸の煮干し」を作り続けている。
「今日のいわしはどうだー!」
「いいのが捕れたぞー!」
と、会社と海で会話が出来るほど近くでとれた魚。
「日本のあちこちでいわしは捕れる。でも、「八戸の煮干し」としておいしく食べてもらう煮干しを作る為には、八戸のいわしで作るのが一番だと思います。」
そう話してくれたのは、中商の中道栄治さん。とてもたくましく、ユーモアあふれる中道さんだが、それは簡単な事ではない事が話を聞いてわかった。
 八戸で煮干しに適したいわしが捕れるのは9月末から11月の始めまでの約2か月間しかない。そして、夜の気温が10度以下のこの時期の気候が煮干し作りに一番適している。この時期を過ぎるといわしに脂がのりすぎて、おいしい煮干しが作れないと言う。とにかく、中商では八戸産のいわししか使わないというポリシーを守り続けている。どうしてそこまで八戸のいわしにこだわるのだろうか?
「八戸の魚にしかない、八戸のおいしさがある。魚は南では暖かく動きが活発で脂が落ちる。北は寒すぎて脂がつきすぎる。八戸はちょうどいい脂ののった魚がとれる。科学的な根拠はないけどね。」
と、言うが、八戸の海といわしを何十年も見てきた目に、科学的な・・・という言葉は必要があるとは思えない。
「そんな八戸の魚を何代にもわたって八戸の人は食べてきたんだ。遺伝子的にきっと八戸の魚のおいしさを知ってると思わない?」
だからこそ、中道さんにとって「八戸の煮干し」は八戸で捕れたいわしでないといけないのだ。
 煮干しの作り方にも真剣だ。昔ながらの製法で、畳一畳ほどの網に煮干しを敷き詰めて何段にも重ねた状態で煮る。魚がお湯の中で動いて傷がつかないようにするためだ。煮上がるとグランドほどの広さの敷地一面に網をしきつめていわしを天日で干す。畳一畳ものいわしは重い。重労働だ。うまくいけば三日で干せると言うが、天気との勝負。雨が降る前にしまったり出したりの繰り返しで、雨が続くと仕事にならない。こうして大切に作られた煮干しは選別され、やっと店頭に並ぶことができるのだ。

 実際に食べて見た。久々の煮干しのまるかじり。ん?ほろ苦さだけじゃない。後に驚くほど濃い旨みが口に広がる。やはり「八戸の煮干し」はおいしい。
 うれしい動きもある。煮干しは使いづらいとの声の中、青森県をあげて短命県返上の一環として、塩分を控える事が出来る「できるだし」の活動が始まったのだ。煮干しも入ったこの「できるだし」は家庭用もあるが、給食用にも開発され、広がりをみせている。子供たちが家庭だけでなく、学校でこの味を知って、八戸の味を未来につないでいく新たなとりくみだ。
 また、友人に教えたい事が一つ増えた気がする。



取材に応えてくれた方

中道栄治(なかみちえいじ)/プロフィール
1957年八戸市江陽生まれ。祖父が創業した、中道商店の3代目。海産物の加工業をしている。現在加工品のメインは煮干し。小さい頃から実家の仕事場で遊びながら育ち、学生のころから作業の手伝いをしていた。

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取材と文

高森栄子(たかもりえいこ)/プロフィール
40代。二児の母。最近家庭菜園を始めて、少しずつ野菜の種類を増やすのを楽しんでいる。いつか、庭を作って園芸にも挑戦してみたい。

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