No.32

ポートアイランドの近未来的巨大タンク

八戸が誇る日本のエネルギーの貯蔵基地は、
無機質な美しさをもった音のない不思議な世界。
しかしそこでは環境と安全への対策が共鳴している。

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松田浩二
取材・文 渡邊杏果

 八戸には、巨大LNGターミナルがある。そこには、14万キロリットル貯蔵可能なLNGタンクが2基、12台のタンクローリーがLNGを積み込み、同時出荷可能な設備などがある。ターミナルの奥へ進むと、びっしりと霜のついた配管、地面へともぐりこむ銀色の導管も見ることができる。それらの一つ一つが近未来的で、ターミナルは無機質な美しさをまとっている。
 また、年に5、6回ほど全長約270メートルの巨大タンカーが桟橋に横付けされる。タンカーには東南アジアから仕入れた液化天然ガス(LNG)が入っている。LNGは環境に優しいことや、安全なことから、化石燃料に代わるエネルギーとして注目されている。液体のLNGは気体に変換され、八戸の地中に埋められた約20キロメートルの導管で、工場へと送られている。また、このLNGターミナルからは、タンクローリーや船で北海道、東北一帯にLNGを運んでおり、東北の一大拠点となっている。八戸港には、広い土地、航路、大型タンカーが入港できる環境が揃っていたことから、拠点として選んだのだと、JXエルエヌジーサービスの社長・松田浩二氏は語った。松田社長は、おだやかに話す方だった。しかし、おだやかでありながらも、強い信念が見え隠れしていた。
 2011年3月、八戸、東北を大きな地震と津波が襲った。幸い、LNGターミナルは地盤改良工事後で建物の建設はこれからだったので、ほとんど被害を受けなかった。その後の建設の工期もそれほど遅れなかったが、被災を受けて設計を大きく変えた。
 重要な設備は全て2階以上に設置し、扉は防水扉にした。さらに、基礎を1メートル上げ、6.5メートルの津波にまで耐えられるようになった。また、社員の命を守るため、3階の屋上にいざとなったら避難できるようにしたことにより、22メートルの津波まで耐えることができる。津波によって様々な対策ができたので、そういった意味ではよい経験ができたのだと松田社長は振り返った。
 LNGは、先述した通り、その環境性と安全性が注目されている。安全性には、その特性が大きく関わっている。LNGは沸点がマイナス162°Cと、とても低い。沸点が空気中の温度より低いため、LNGは常温では気体の天然ガス(NG)の状態になる。またNGは空気よりも比重が軽いため、すぐに大気中に拡散する。だから、漏れてしまったとしても、爆発する可能性は低くなり、安全なのだ。この特性から、全く音を出さないという非日常的な世界が作られる。このターミナルではLNGを海水にさらすことにより熱交換を行いNGに変換しているが、その工程で音はほとんどしない。だから、ターミナル内は、出荷するためにガスを圧縮するピストンの音以外はない、一種不思議な世界なのである。
 八戸LNGターミナルでは、安全対策も行っている。LNGがタンクから漏れないよう、一番厚い部分で1.2メートルのコンクリートで周囲を囲っているのだ。さらにワイヤーで縛ることで強度をもたせていることから、タンクの上にガンダムも立つことができるそうだ。
 タンクには、ブランドであるENEOSのマークがある。このマークは、八戸市内どこからでも見えるよう計算されており、夜になると光に照らされ、八戸のランドマークとなっている。こうした取り組みから、八戸LNGターミナルでは2015年12月に八戸市景観賞を受賞している。このことについて、松田社長は、
「八戸市は街から海と、海から街の景色が全く違い、八戸港の大きさを感じるはず。そういったことを、1つの財産として活用していくべきですよね。そのためにも、これからも八戸市のためにできることをしていきたい。」と話していた。
 最先端の宇宙ステーションのような雰囲気をもつ八戸LNGターミナルは、今日もまた、世界から東北各地へ、お客様へとLNGを運んでいる。



取材に応えてくれた方

松田浩二(まつだこうじ)/プロフィール
1963年、スケートが有名な北海道苫小牧市に生まれる。世界中で活躍するオイルマンに憧れ、日本石油(現JXTGエネルギー)に入社。石油からエネルギーの多様化が進む中で、LNG事業に携わるようになる。中核都市八戸のポテンシャルの高さに着目し、この地にLNGターミナルを建設することを決断した。

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取材と文

渡邊杏果(わたなべきょうか)/プロフィール
八戸高校1年生。放送部に所属。趣味は、家で飼っている猫とゴロゴロとしていること。以前より、工場や巨大な建造物に興味があり、今回八戸の港の企業について取材した。

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