No.16

動物たちが無二の友

真剣にサルとつきあい、親身にカメの声を聞く。
毎日、何かしらスリリングな騒動が巻き起こる動物園で、
苦労を楽しさにかえて生き生きと働く若い女性の姿。

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長根優
取材・文 山本裕美

 八戸公園こどもの国。遊園地のイメージが強い方もいるかもしれないが、広大な敷地の東側に動物園がある。
 その動物達の飼育に携わっているのは、何と4人。その中の一人が長根優さん。紺色の作業着を着てやって来たその人は、静かな雰囲気の若い女性だ。
 見せてくれたアルバムには、たくさんの動物達の写真。
「この写真のサルは若い頃で、大人になった姿がこちら。この子供は後のボスザルです。こっちがボスのお母さんです。あと、これ。ウサギとカメって事で撮りました。」
全てのサルの顔と名前を覚えている。なんとボスの家系図までも覚えていた。赤ちゃんウサギと母ウサギの写真は、確かな信頼関係が成り立っていないと撮れない写真だ。
 小さい頃、触れないけど動物が好きで、いつか動物園で働きたい。そう思いながら県外へ進学したが、いつしか生まれ育った地元八戸で働きたいと考えるようになっていた。そこへ、八戸公園の動物舎担当として働ける機会が巡ってきた。
 ウサギやモルモットなど、以前はヤギやヒツジもいた。座学では勉強しなかった動物達との接し方は先輩飼育員にたくさんの質問をして学んだ。犬のトリミングしか、やった事がなかったが、バリカンでヒツジの毛刈りも初めてやった。
 どの動物もおとなしいが、サルは手を焼く。二人一組でサル山に掃除に入るのだが、油断していると、ホースを引っ張られるは、掃除道具を持っていかれるは。ある日には水道の蛇口を持っていかれて取り返すのに苦労した。時には噛まれてしまうなど、その他にもいたずらの数々だった。人間と言えどもサルにとっては群れの上下関係が大事。サル山に入る時には強気で行かないといけない。とにかく、動物園の毎日は、何が起こるかわからないスリルに満ちている。
 そんな大変な毎日の中、出勤してきた時、明け方に産まれたであろう赤ちゃんを発見したことがある。その可愛さに癒された。好きな事をして働くのは、やはり楽しい。
 その一方で、避けて通れないのが動物の死である。
 働き始めた時と同じ時期にやって来た、ケヅメリクガメのカメ吉。最初は二十五センチの子ガメだったのが、五十センチに成長した。散歩から中々帰って来ない時にカメ舎に運ぶのも重労働となる程になった。そんなカメ吉が2016年5月に亡くなってしまった。カメ吉に会いに足を運んでくるお客様もいる中、申し訳ない気持ちになり、撮りためていた写真を眺めては同期の友と言ってもおかしくない姿 を思い出す。
「やっぱり楽しいです。好きな事をして働けるので。」
そんな長根さん、今は入ったばかりの後輩の指導を行いながら日々の業務をこなしている。
 サル山を上から見ているだけではわからない苦労と、近くで接しているからこそわかる動物の可愛さ、面白さを長根さんは知っている。これからの日々にもいくつかの困難と多くの喜びが待っているだろう。
 県内唯一の屋外動物園では、静かに、大騒動が巻き起こっている。

取材に応えてくれた方

長根優(ながねゆう)/プロフィール

1986年生まれ。八戸で生まれ育つ。小さい頃から触ることはできなかったが動物が好きで、動物専門学校に進学。卒業後はやっぱり地元で働きたいと八戸に戻り、八戸公園の飼育員となり10年。ふれあい広場やサル山を主に担当し、うさぎなどの小動物の世話から羊の毛刈りまで、広く担当。

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取材と文

山本裕美(やまもとひろみ)/プロフィール

30代。はっちのガイドボランティアをしている。まちぐみ69号でもあり、役者でもあり、各種イベントスタッフでもあり、各種イベントに足を運ぶ人でもある。


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