No.78

桜ヶ丘団地を作った人

みんなが暮らせるまちをつくりたい。
私財を惜しみなく投げ打って団地を造成した、
スケールの大きな「東北初めて」物語。

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久保澤恂 細越光夫 
取材・文 中上千壽子

 「虎は死して皮を留め、人は死して名を残す」と言われますが、この八戸に個人の全財産をつぎ込み、団地造成に立ち上がった人がいました。久保澤義雄氏です。(大正15年生、平成3年66歳逝去)
 宅地造成には住宅都市整備公団や企業団などの整備事業により手がけられることが多いのですが、そんな中、いくら財閥であったとはいえ、東北では初めて個人として団地の造成に取り組み、地域経済の発展に一役かった「久保澤義雄氏」とは一体どのような人物であったのでしょうか。長男の現東公民館館長 久保澤恂氏と造成当初から関わり歩んできた町畑地区連合町内会長 細越光夫氏からお話を伺ってみました。
 細越氏=『義雄氏は、町畑(旧小久保)久保澤の総本家として財閥であり格式のある大きな家、そこの惣領として育ち、当時の八中に入るなど頭も良く、馬鹿がつくほど実直な人でもありました。人に頼まれてもまず「嫌」という事はなく、物事にかかわらず注意をされても穏やかに受け流す人でもありました。《土地を造成し団地を造る》という思いは、変わりゆく地域の中でこんな町内会の声を聞くようになったからです。《町畑小学校の生徒数がどんどん減っている。白銀小学校の分校だけれども、もしかすれば合併するかもしれない》《町畑小学校を守れ!統合や廃校から守ろう》との声です。』
 恂氏=『私の父親は「それだと人を集めなければならないな」と団地づくりに取り掛かったのです、たまたま自分の持っていた土地を「思いついたら即実行」とばかりに造成し、事業が進むにつれ入居する人も多くなり子どもの声も聞かれる様になりました。』
 細越氏=『義雄氏は人が良い方だったのでPTAを始め協力者もたくさん集まりました。そして豪傑気質もありました。本人は儲ける気が全くない人で、まるで土地を処分するかのような感覚で、自分の土地を新たに住民に手渡していました。常人には考えられない行動をとる人でした。バス道ができ、水道管も入り街灯も整備され、1丁目から4丁目までの町内会もでき「振興会」と呼び地域の活性化も図られたのです。義雄氏は「人が良い」を通り越して、自分の財産を他人に与えるという感覚の持ち主でもあり、伝昌寺を建てるなど犠牲的な精神の持ち主でもありました。』
 恂氏=『町畑は「なんとかしなきゃならない」という気質の人が多いところでもあります。周りの人たちの一生懸命な協力により人口も増え続けました。』
 細越氏=『よりいろんな物も整備されましたが、義雄氏は自分の懐には入れず人に与え続けました。「チョットおかしいんではないか」とも思ったこともあります。』
 恂氏=『私の父は自分で何か使うのに「チョコっと有れば良い」という捉え方をする人で、我々と異なる金銭感覚の持ち主で、この「チョコっと」が、協力者の方々を毎晩のように飲み会に連れて行き、ご足労をねぎらうのです。この父親を見ていて理解できない時もありました。地域の為に、「町畑小学校をなくしたくない、本校に格上げしたい。複式から単式の学校になりたい。」という思いを持ち続け、その思いは親たちの苦労の末にここに叶ったのです。昭和38年度は最も児童数が少なく全校児童59名、私が在学していた頃は88名でしたが、児童数は徐々に増え、昭和58年度には564名にまで膨れ上がりました。その後少子化の影響などもありましたが、現在も227名の児童が町畑小学校で学んでいます。』
 他人の為にここまでできるものなのだろうか。しかし義雄氏はそれを事実、成し遂げてしまったのです。今では旭ヶ丘、町畑、湊高台の3地区に分かれ、中学校1校、小学校3校の住宅地として多くの人が住んでいます。
 義雄氏の息子である館長さんは穏やかで、あったかい気持ちで迎えてくれる人でした。久保澤義雄氏という父親の姿が館長さんの姿に重なるのを禁じえなかったのでした。



取材に応えてくれた方

久保澤恂(くぼさわまこと)/プロフィール
1947年八戸市小久保生まれ。久保澤義雄氏は実父。町畑小学校6年間複式学級で卒業し、小さな小学校生活を送る。八戸市役所職員を経て、現在八戸市立東公民館館長として東地区の生涯学習・社会教育に尽力。

細越光夫(ほそごえみつお)/プロフィール
1936年生まれ。現役退職後は町内会長や連合会長を勤め、平成26年には市功労者として市から表彰される。現在81歳、毎朝妻の作る野菜ジュースで1日が始まり、昼は500坪の畑で汗を流し、夜は妻の料理で晩酌するのが何よりの楽しみ。

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取材と文

中上千壽子(なかがみちずこ)/プロフィール
1948年八戸市白銀町生まれ、同町育ち。八戸市公民館24館非常勤館長、女性第一号。実績:平成22年11月、優良公民館文部科学大臣賞 最優秀賞受賞。現在は青森県史編纂委員会委員を務める。

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