No.57

神田山つつじを咲かせた人々

新緑の時季、神田山に美しく咲き誇るつつじの群れ。
ボランティア、チャリティ、あらゆる取り組みを通じて
30年にわたる人々の活動が春の絶景を創りだした。

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嶋守隆夫
取材・文 慶長洋子

 東地区にある神田山には、毎年5月の末から6月の初めにかけて、色とりどりの美しいつつじが咲き誇る。この見事なまでの「つつじの神田山」になるまでには「鹿友会(ろくゆうかい)」の30年間の活動があった。今回、鹿友会で長年活動されている嶋守隆夫さんにお話をうかがった。
 鹿島鹿友会(かじまろくゆうかい)は、昭和46年に設立され、鹿島建設株式会社八戸出張所とその協力会社が、植樹活動や新井田川清掃美化活動などのボランティア活動や、親睦のために運動会を行っている。神田山につつじの植樹をしていた頃の62社からは減ってはいるが、現在も46社が登録し、県内では最大級の組織である。
 その鹿友会の神田山のつつじ植樹は、当時、秋山八戸市長の「神田山をつつじの名所にしたい」という要望に賛同したことから始まった。鹿友会も、地域に恩返しをしたいという想いから、チャリティーバザーで得られた収益金の30万円を寄付し、つつじ200本の植樹を行なった。昭和51年から平成17年までの30年間にわたり、環境美化の一環として、この植樹は続いた。つつじは基本的に三種類「どうだんつつじ」「やまつつじ」「おおやまつつじ」で、低木のため防犯にも役立ち、春には花を咲かせ、人々を楽しませてくれる。
 植樹祭は、5月の後半から6月の前半の間に、登録している各会社の人々が集まって行われる。集まった会社は40社以上で、200人近くの会員が集結する。苗木の花の色を見ながら、「この色はここにあったほうがいい」など色のバランスを見て植える場所を決めていく。
 まず市長が植えて、後は各社の会員が植えて行く。元気に根付くようにと思いを込めて、土をかぶせていく。一時間ほどで200本を植え終わる。各会社の作業着やヘルメットの色が違うのがそれもまた目に楽しい。神田山はとてもカラフルになり、賑やかな植樹祭となる。
 この活動を30年続け、総本数7000本のつつじが植えられた。「つつじの名所となったここ神田山に、自分の植えたつつじがあると思うとやっぱり誇らしい。きっと植えたみんなが同じ気持ちだと思う」と嶋守さんは言う。鹿友会みんなの手で1本1本植えてきた活動が、つつじが満開に咲き誇る神田山を作ったのだ。
 かつては窪地で雑草だらけの無法地帯だった。それが春ごとに鮮やかな花が咲き誇る名所となったのである。窪地を覆うように、一面どうだんつつじの壷形の小さな可愛い花や、やまつつじの目が覚めるような赤・ピンク・オレンジの鮮やかな花たちが私たちを楽しませてくれるのである。
 そして、平成7年から神田山つつじ祭りが開催される。その後、隣接地に東公民館が建設され、遊歩道、東屋も整備され、憩いの場として一層の充実が図られた。祭り当日は、色鮮やかに咲き誇るつつじを眺めながら住民が遊歩道を散歩する。公民館の中では地域の婦人会の皆さんが芸能発表をしたり、子どもを対象としたゲームもある。公民館の前にはいくつも模擬店が建ち、沢山の手作りものが並ぶ。つつじの満開に合わせて、春の訪れを喜ぶかのように、地域の人々が総出でこの祭りの1日を楽しんでいる。
 雑草地であった神田山も、鹿友会の活動によって、今や地域の人たちには無くてはならない憩いの場所になったのだ。
 嶋守さんは最後に茶目っ気たっぷりに言う。「実はね、7000本じゃないんだよ」と。報道や八戸市への目録では7000本のつつじとなっているが、正式な本数は実は7001本。最後の一本はというと、つつじではなく「やまぼうし」である。記念樹として、記念碑のそばに一本植えてある。
 やまぼうしの花言葉は「友情」。それを知って植えたのかどうか定かではないが、鹿友会が地域に恩返しをしたいという想いが、加入している会社同士の友情を生み、現在のつつじの名所に繋がったのかもしれない。

取材に応えてくれた方

嶋守隆夫(しまもりたかお)/プロフィール
1949年生まれ。山田設備機工株式会社代表取締役社長。岩手生まれ。八戸に来て約35年、同社で地球に優しい環境づくりの事業に従事する。約20年近く鹿友会の会計を務め、緑溢れる八戸を目指す活動をしている。/p>

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取材と文

慶長洋子(けいちょうようこ)/プロフィール

61歳。八戸市の委託で出前消費者講座を行っている。町内会、老人クラブ、ホットサロンなどの集まりにお邪魔し、多くの皆さんとの出会いを楽しみにしている。いつまでも新しいことにチャレンジできる自分でいたい。


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