6月9日(月)に行われた、第1回魚ラボ会「魚、食べてますか?」は、水産庁研究指導課情報技術企画官の上田勝彦さんをゲストにお迎えしました。
水産関係者がいかに魚食振興のためにがんばって来たか、また、魚を食べることが、日本にとって大切なものを支えることにつながるということを、再発見しました。
速報で、お話の一部をご紹介します。(6月末発行の魚ラボ新聞3号でもご紹介します。)
●日本人と魚食
30年前に比べると、日本人の魚離れは進みました。特に、わずかこの10年の間に、肉と魚の消費量は逆転したのです。今は国民の7割がスーパーで魚を買っていますが、魚を買っているのは65歳以上の年代が中心です。そんな魚好きの親たちの子どもである30代は、主に外食で魚を食べています。
日本人はマグロ、イカ、エビ、サーモン、イクラなど、わかりやすいものしか食べなくなっています。そんな日本人の子どもたちは、魚から切り離されていってしまいます。
日本は世界で90番目くらいの小さい国ですが、6700もの島々がある日本列島は、海岸線を足していくと、なんと世界6位になる海の国です。
全世界に4500種類の魚がいるうち、300種が日本近海にいます。貝類なども含めれば、500種類にもなるのです。日本近海は、世界の三大漁場。
山が深くて、その山がいい水を海に供給するため、日本近海はすばらしい漁場になっているのです。
国民の代表として生産者が魚を獲り、加工業者や魚屋、飲食店がそれを買う。そして彼らが提供するものを、消費者が買って食べることで、水産業界を支えています。
本来、自らの国の特長や条件によって、国民の食生活は決まるものです。
日本人はいろいろな意味で、魚を食べるべきだと思います。
●魚を食べるために
水産業界は、魚食振興のために30年間ずっと「魚食は日本の文化だ!」「自給率をアップするために魚食を!」「良質なタンパク質を魚で摂ろう!」「一次産業と水産資源を保護しよう!」というスローガンでやって来ました。しかし、それは消費の現場には伝わっていません。
魚を食べるときに、「日本文化を守ろう」なんて思う人、いませんよね。
魚と消費者の間に、食べ方を教える人がいないと、魚を食べられないという時代になってしまったのです。
現実的には、「グリルのそうじをしたくない」「煙や臭いを出したくない」というのが、主婦の本音です。
そこでぼくは、現代の家庭環境に合わせて魚を調理する「伝えるための料理」を考えたのです。手間をかけずに時間短縮、おいしく栄養があり、お財布にやさしい。そんな料理です。
おすすめは「湯煮」。お湯で茹でるのです。とにかく簡単で片付けも簡単です。魚はなんでも、アジの開きでもいいです。どうぞ試してください。
おいしい湯煮を作るには3つのコツがあります。
ポイント1:魚の切り身の全面に薄塩を当てる。
ポイント2:フライパンか鍋に湯を沸かしたら、大さじ1の日本酒を加える。
ポイント3:魚を入れたら、グラグラと沸騰しないように火加減して、切り身で1分、骨付きの魚なら3〜5分ほど加熱する。切り身なら身がほぐれた状態、骨付きなら骨から身の端が浮き上がったら火が通ったサイン。
仕上げ:魚を皿に移し、刻み長ネギとポン酢をたっぷりかける。(熱いうちに小量のバターを塗り、醤油、コショウで味付けすれば洋風。ネギとショウガを刻み、豆板醤を溶いた醤油、ゴマ油を混ぜてかければ中華風となる。)
本当に簡単でおいしくできますので、ぜひ、やってみてください。
●陸奥湊魚菜市場で
上田さんは忙しいスケジュールの中、八食センターや八戸第2魚市場、そして陸奥湊の魚菜市場を、精力的に探訪しました。
第2魚市場午前7時ころ。競り人でにぎわう魚市場に、青森県漁業士会会長の深川修一さんが漁を終えてマグロやブリを水揚げした。朝早くから、おいしい魚のために、みなさんおつかれさまです!
魚菜市場で朝食を食べようとしたときです。サバを焼いていたおじさんが、「私たちはずっとこうして食べてきたんです。」と上田さんに特別の椀を出してくれました。
ご飯の上に炭火でこんがり焼いたサバをのせて、お湯をかけただけの簡単なもの。上田さんはこの茶漬けならぬ湯漬けをそのまま2〜3分置いてから、「もう食べ頃かな」とサバの身をほぐして、私たち魚ラボ編集部にもそれを食べてみるように勧めてくれました。
サバの身のコクとお湯にしみ出たサバだしが、絶妙なハーモニー!塩気がないのに、サバの旨みでご飯が進む絶品でした。
「こういうのが、『探りたくなるおいしさ』ということなんだよ。」と上田さんの深ーい一言。
八戸の魚食の豊かさを、上田さんに教えていただいた朝でした。