魚ラボ

【報告】田附勝トーク「八戸の漁師たちに迫る」(第6回魚ラボ会)

 11月15日(土)、第6回目の魚ラボ会は、写真家 田附勝さんがゲストでした。
 田附さんは、5月から月1回一週間滞在のペースで、八戸の沿岸部に通い続けています。2006年から2011年の間、東北地方で撮影した作品は写真集「東北」として刊行され、第37回木村伊兵衛賞を受賞しました。そもそもデコトラを追い続けて日本全国を駆け巡っていた頃から、「はずれたところから日本人を見たい」という思いがあったといいます。
 「何かぞわぞわした感覚」に引かれて東北に通ううちに、「ここには日本の古い層が眠っていて、それを引き継ぎながら東北の人々は生きているのではないか」と感じたといいます。太古の感覚、動物的な感覚、生と背中合わせの死...。そういったものが、人々の顔や東北のモノに存在しているように、彼には見えたのだそうです。

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 八戸といえば、なんといっても八戸漁港が有名ですが、田附さんは初めて訪れた白浜、深久保、種差、大久喜、金浜など、浜の人たちの営みが感じられる小さな漁港のたたずまいに引きつけられました。
 浜で漁師さんや、漁業を支えている女性たちと知り合い、今では家に呼ばれてご飯をごちそうになることもあるといいます。

「 家にお邪魔してご飯をごちそうになったときに、浜の人たちがどんなものを食べているかがわかる。
家の窓から何を見ているかもわかる。大久喜の家からは、必ず海が見える。みんなが海を見て暮らしているんだよ。
でも、そうやって彼らの暮らしの一部を見せてもらいつつも、良い意味でのよそ者であることも忘れないようにしている。
あくまでよそ者としてそこにいないと、いろんなことが見えなくなってしまうからね。」 

漁に出かけるまでには、網の準備や仕掛け作りなど手間ひまかかる繊細な作業が続きます。いろいろな人が関わって、魚が捕れることがわかってくると田附さんは語ります。
 「漁師さんは、目の前に限りない海が広がる大海原で働いている。陸では想像できない、ものすごく開放的な感覚だよね。その船にあがった魚が身体をくねらせる勢いがすごいし、それは怖いくらい。その命をあやめていただいているという事実を、否が応でも意識するようになる。魚と人との関わりを、写真で感じてもらえたらいいよね。今回の展覧会のタイトルは『魚人(ぎょじん)』です。」
 写真展は1月24日から始まります。冬が深まりゆく中、田附さんの浜通いは続きます。

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 参加者からいただいた感想の一部をご紹介します。
「今のリアルな姿を色眼鏡なしに見つめていて、すばらしいと思いました。視点も多様ですごいです。」
「一匹の魚にもストーリーがあることを理解して食べて行きたい。」
「八戸の浜の暮らし方そのものが豊かだということをしみじみ思います。」
「写真撮影の背景に対する理解が大切なことを改めて感じた。」
「日常の風景になっていることが写真になることによって、また違った見方ができたり、近所の人から漁について教えてもらったことを思い返す時間になりました。漁師の方たちの生活を支えるためにも、魚食についてもっと伝え、考えていかなくてはならないのかな。」
 

 田附勝 オフィシャルサイト
 http://tatsukimasaru.com/