No.73

アカハタモチが伝えるハマの文化

海藻のおいしさを最大限に引き出した、
彼女のつくる「アカハタモチ」は香りもモチモチ感も最高。
これはまさに、八戸浜通りのソウルフードだ。

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中村モト
取材・文 西久保真美

 何も知らない人が、この名前の食べ物を想像するとしたら、赤い旗の飾りがついたお餅のお土産物というところでしょうか?
 実はアカハタという海藻から作られるモチモチした食感の、八戸の浜通りのソウルフードなのです。通称アカハタは、赤紫色でヒラヒラと薄く、表面に数の子のようなまばらなつぶつぶのある、アカバギンナンソウという海藻です。1月から5月頃まで三陸沿岸で収穫されます。そのアカハタから作るアカハタモチは、見た目は海藻色でキメの荒いこんにゃくのよう。食感も上質なこんにゃくのようで、その噛みごたえを楽しんでいるうちに口の中に強い磯の香りがふわっと広がります・・・。お刺身のような厚さにスライスして酢味噌などで食べるのが一般的です。
 1月下旬、この日の種差海岸は良く晴れていて、芝生の上に積もった真っ白い雪とエメラルド色の海が、きりっと冷えた空気とマッチしていてとても爽やかでした。その種差海岸に程近い所にお住まいの中村モトさんを訪ねました。ご主人の石雄さんと共に私たちを迎え入れて下さったお部屋は暖かく、思い出の写真が飾られた素敵なインテリアは、ご夫妻の優しさにあふれていました。モトさんは、大久喜でお生まれになり50年程前に種差に嫁がれたそうです。アカハタモチは子どもの頃から召し上がっていたそうですが、これといった思い入れもなく、嫁いでからはお姑さんが作られていて、ご自分は働いていたので作ることはなかったそうです。
「アカハタモチを作るようになったのは、退職してからのここ10年くらいです。何度も何度も失敗してだんだん満足行くようになりました。ここ種差では3月から5月頃に作ります。私は売ったりしているわけではなく、自家用に作っているだけですよ。」
と、モトさんは控えめに話されました。
 作り方をお聞きしました。採りたてのアカハタの堅い部分などを取り除いてから適当な長さに切り、蒸し器で15~20分蒸した後、ヘラで丁寧に練っていると餅のように粘りが出てきます。そして表面がつるっとしてきたらバットなどに伸ばすように広げて固めます。モトさんのお話からアカハタモチを美味しく作る塩梅は、何度も経験を重ねてようやく身に付いていくということを実感しました。他に何も入れず、海藻のアカハタだけで作るからこそ、蒸し加減や練り方にコツがあるのだと思います。お話を聞きに行った時は、種差でアカハタの採れるシーズンには少し早かったので、旬の頃に収穫して作ったアカハタモチを冷凍保存しておいたという一品をご馳走になりました。ポン酢をかけていただいたのですが、スーパーで買う物よりモチモチ感が強く、香りも良く、本当に美味しくて、何だか特別な感じがしました。
 アカハタの他にも採れるマツモやフノリ・ツノマタなどの新鮮な海藻や、ホッキ・ウニ・アワビなどの海の幸に囲まれた生活について聞いてみました。
「毎年時期が来て、海から採った新しいものを食べると長生きするような気がします。本当に豊かで有り難いことですよね。沢山採れれば近所で分け合ったりもしてね。」
テレビ番組で志村けんさんが来た時に、フノリの天ぷらを作ってあげたのがきっかけで種差海岸でのイベントなどでもフノリの天ぷらを振舞うようになったり、種差を舞台にしたドラマの撮影などにも協力したり、おもてなし精神にあふれるモトさんです。
 最後にぜひご紹介したいのは、モトさんのされているおもてなしの原点のようなお仕事、種差海岸の清掃です。シーズンオフは三日おきに、シーズン中は毎日、芝生に落ちたごみを丁寧に拾い、トイレの掃除もされます。またシーズン中に月2回行われる草刈り作業の後始末もされるそうです。あの種差海岸天然芝生地のすがすがしい景観は、モトさんたちの労をいとわない地道な作業がなければ決して維持されることはないのです。モトさんは、キラキラした素敵な笑顔で話されます。
「ここを訪れるいろいろな人たちに出会えて、とっても楽しいですよ。」
と。アカハタモチを通して多くを学んだ貴重な出会いになりました。



取材に応えてくれた方

中村モト(なかむらもと)/プロフィール
1947年生まれ。大久喜で生まれ育ち、種差に嫁いで50年。仕事を退職してから、海藻を使った料理を自分で作るようになる。現在は種差海岸やインフォメーションセンターのトイレの清掃の仕事をしながら、種差を訪れる人々との交流を楽しんでいる。

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取材と文

西久保真美(にしくぼまみ)/プロフィール
50代。ミセスV6という女性ビデオグループに所属。八戸テレビ放送の「元気な仲間」という番組を企画・制作。地域で活躍する方々を紹介する活動をしている。

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