No.46

毛皮のエキスパート

毛皮の種類や加工の多様さを熟知する人は少ない。
全国から依頼が舞い込む、専門店が八戸にはある。
極寒の中で作業をする人たちをあたためてきた専門店の仕事とは。

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河村和男
取材・文 石屋知里

 「ん・・・?剥製・・・?」
 小中野を表通り沿いにずんずん歩いていくと、湊橋の手前でそのお店を見つけることができます。
 「(株)丸一河村」。1896(明治16)年創業の、毛皮製品の加工や販売を行う老舗です。湊・小中野周辺に住む河村家の総本家十九代目でもある河村和男さんは四代目の店主です。そうそう、河村家はその昔、関西からやってきた明智光秀の派閥の流れを汲む武士を祖先にもつのだそうです。なんとも興味深い話ですね!このお店は江戸時代に呉服の販売がメインで始まり、二代目の店主の頃から毛皮製品の製造・販売を取り扱いしました。現在は不動産業や太陽光発電の売電業も行っているそうです。ちなみに、五代目となる息子さんは今年入社したばかりです。
 「うちは卸販売もしているけど、原皮を仕入れて自社で加工もしてるんですよ。加工をしている店は東北では弊社だけですね。」
毛皮の専門店というものはそもそもあまり多くありません。そんな中加工も行う「(株)丸一河村」は全国でも珍しい存在といえるため、日本中から依頼が来るのだそうです。
 ところで毛皮製品とはどんなものでしょう。
「材料となる毛皮は様々です。手頃だけど手触りの良いウサギの毛、高級で、光沢の美しく丈夫で寿命の長いミンクの毛、硬い動物の毛皮は敷物に使われるなど、それぞれ特性がありますね。」
私も実際にいくつか触らせていただきましたが、それぞれに独特の手触りや異なる硬さ、伸び、暖かさがありおもしろかったです。これらの材料はハンターやマタギの方から直接、あるいは輸入(コンテナ1台にウサギ1万羽分、規模が大きい!)によって入手するそうです。現在はワシントン条約などにより、シロクマなど販売できない動物も多いようです。
 あっ、よく考えてみれば同じ動物でも個体ごとに毛皮は違っているはずです。そう思って聞いてみました。
「そうなんです。毛の長さ、密度、色、艶、皮の厚さ、硬さなど、とっても奥が深いんですよ。これらを見極める目が備わった一人前の毛皮屋になるには、十年もの修行が必要なんです。しかも、毛皮製品には専用のミシンがあって、これを扱えるようになるためにも、やはり長い年月を要しますね。」
これを聞いて、私は心の底から驚きました。
「製品を作るために特徴の似た毛皮を集めたら、それらをカットしてずらして縫う、という作業を何度も繰り返し、毛皮の無駄をなるべく少なくしながら長く縫い合わせていくんです。例えばあの、銀座のセレブが着ているような豪華なファーコートがありますね。これも、毛皮が集まらなくって、一着仕上げるまでに3、4年かかってしまうこともあるんです。」
 こうやって材料を見極め丁寧に縫い合わせていく作業、貴重な自然の恵みである毛皮を、無駄にしないよう生かしていくこの仕事の奥深さ。本当に難しく大変なお仕事だと思います。しかし、だからこそ面白く、やりがいを感じながらこの仕事に携わってきたのではないかと、河村さんのお話を伺いながら感じました。貴重な材料で新しいものを作ろうと努力しています、と語る河村さんに、プロとしての高い意識を感じました。
 しかし、毛皮は高級品ですから、なかなか一般人には手が届かないというイメージを持ってしまいます。そう言う私に河村さんは丁寧に答えてくださいました。
「それでもひと昔前よりは随分安くなっているんですよ。何より毛皮は暖かいんです、やっぱり。省エネにもなりますし。コート等を買うのは難しくても、上着の内側に毛皮を取り付けるだけでかなり暖かさが違いますよ。襟巻きの種類も数多く取りそろえてあります。うちは加工をやっていますから、見るだけでもいいので、是非一度、店内を隅々まで見ていって欲しいです。どんどん皆さんに毛皮を身につけて欲しいなと思います。」
 河村さんにお会いして、縁遠かった毛皮が身近に感じられるようになりました。



取材に応えてくれた方

河村和男(かわむらかずお)/プロフィール
1960年生まれ。毛皮製品の製造・卸・小売を行う老舗、株式会社丸一河村代表取締役にして四代目店主。河村家の総本家十九代目でもある。地元小中野地区の恒例行事、「小中野新丁夜店」を実施する実行委員会の委員長も務めている。

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取材と文

石屋知里(いしやちさと)/プロフィール
八戸高校2年生。剣道部と演劇部に所属し、いろいろなことに挑戦しながら青春を謳歌する学校大好き人間。食べることは生きることだと思っている。歌うこと、絵をかくことなども好き。毎日大変なことも多いがとても楽しい!

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