No.28

日本舞踊で人間修行

流派を越えて磨き合う、洋楽との組み合わせに挑む。
これまでにとらわれることなく舞を追求することが、
美しさにつながり、人間そのものの深さとなっていく。

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泉彩菜
取材・文 播磨李香

 皆さんは八戸で日本舞踊が盛んに行われていることはご存じだろうか。八戸の人口規模から言えば、流派も教室の数も極めて多いのだというが、何故日本の中でも、ここ八戸で日本舞踊が盛んなのだろう。
 元々、子のいる家庭では、日本舞踊やお茶や生け花を行儀見習いとして習わせるのが多かった。八戸には日本舞踊の先生がいて、多くの教室が開かれていた。しかし、そこでは流派ごとの縦の繋がりしかなかった。そこで、昭和42年ごろ、八戸市内の先生達で流派を越え、「みちのくおどり」という会が結成された。この会は、毎年1回ずつ日本舞踊の先生達自身が発表会をして、それぞれが芸を磨いていこうというものだ。それぞれがたくさん勉強し、他の流派の人と競い合って踊りが磨かれていく。お弟子さんたちは、いつかあの「みちのくおどり」に出てみたいと皆が憧れる。みちのくおどりが開催されることは、八戸の日本舞踊の振興に深いつながりがある。このような流派を越えた活動は珍しく、東京からわざわざ見に来る人もいるくらいだ。
 私が今回取材した泉彩菜先生も、そのみちのくおどりの出演者の一人である。泉先生は、同じく日本舞踊の先生である母親の指導のもと、幼い頃から日本舞踊に励んできた。母親の紫峰先生は、唯一みちのくおどりの一回目から休まずに出演しておられる八戸の日本舞踊界の重鎮だ。彩菜先生は大学でも日本舞踊を学ぶことに決め、そこで「日本舞踊×洋楽」という新しい世界に出会う。一見、全く合わなそうに思われるが、これがとてもマッチするのだ。日本舞踊の基本はしっかりおさえつつ、従来の日本舞踊では決してあり得ないような振りを取り入れたりもする。
 泉先生が、日本舞踊を踊るうえで気をつけていることは「品」だという。これは大学時代に先生から言われたことのようだが、品は出そうと思って出せるものではない。日常の生活から自分を律し、所作、振る舞いに気をつけることが大切だという。また、大変なことはゴールがないことだという。自分では上手く踊れたと思っても、後から映像を見て、もっと上手くできたのにと思うことがある。そう思うと、百点の踊りはなく、常に向上心を持って練習に励むことができるのだ。また、年を重ねるごとにできるようになるものもあれば、できなくなるものもある。だが、年をとったから下手になったとは言われたくはないので、踊れる体を保ちつつ、年齢と共にできないことが出てくる身体の状態と上手く付き合っている。また、踊りを磨くためには内面の成長も必要だという。
 泉先生の夢。それは多くの人に日本舞踊を見てもらい、日本舞踊の美に触れてもらうことだ。若い人達が着物を着る機会が減ってきており、日本舞踊に触れる機会も減ってきている。そんな人達にまずは着物を着ることから始め、軽い気持ちで日本舞踊を見に来てほしい。
 泉先生の凛とした姿を見て、私も品を意識しながら、常に向上心を持って進んでいきたいと思った。

取材に応えてくれた方

泉彩菜(いずみあやな)/プロフィール

40代。3歳より母、泉紫峰師の下で日本舞踊を始め、日本大学芸術学部日舞コース卒業後、八戸市内で指導にあたる。古典舞踊ではコンクールで大会賞受賞、創作舞踊も積極的に手がけている。八戸市文化奨励賞受賞。

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取材と文

播磨李香(はりまももか)/プロフィール

八戸東高等学校2年生。演劇部所属。ダンスが大好きで、いつでもどこでも踊ってしまう。最近はメイクにはまっていて、コスメ集めが大好き。そのため、金欠になることもしばしば。


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