No.11

ビジターとともに楽しむ史跡歩きガイドツアー

根城を訪れる人それぞれの心に描かれた歴史ロマン。
出会いと会話を楽しみ、教えつつ、時に教わりつつ、
ビジターのために成長し続ける名ガイドの思い。

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河村美知子
取材・文 山本裕美

 根城史跡ボランティアガイドの河村美知子さんはニコニコしながら、ある日の事を語る。予約してガイドを頼む人もいれば、飛び込みでガイドを頼む人もいる。自ら声をかけてガイドをする時もあるという。
 三人連れの一行が根城にやってきた。女性一人と男性二人。声をかけてみると、「ガイドはいらない」との事。しかし、何か気になる。長く養ってきたガイドの勘がそう告げて、ついていって見ることに。
 主殿のすぐ近くで、一行はしばらく立ち止まっていた。ただならぬ雰囲気が辺りに立ち込める。時間にして十分程だったのだろうか、ようやく何か終わったようだ。聞いてみると、女性は
「気を流していた。」
と告げる。
 八甲田連邦から階上岳を繋ぐ直線上に、気の流れる道のようなものがあり、ここも、その道の上にあるという。いろんな人がいるものだ!いろんな見方があるものだ!
 そうか、根城はパワースポットだったのだ。
 「これはおもしろい!」と、河村さんは、それから来たお客様を案内する際には、そんな出来事を紹介しつつ、深呼吸をお勧めしている。その地点に立って、息を吸って吐いて、深く深く深呼吸。何か力が湧いて来る。かどうかは感じ方次第。
「ガイドさんには色々な人がいるけど、私はお笑い担当。だって、笑って帰ってもらいたいじゃない?そうそう、根城の建設に携わった方のお孫さんが来たんだけど、数年前におじいさんが亡くなられたそうで。思い出してみれば、丁度その辺りから、建物にときどきコウモリがいるようになってね。もしかすれば、そのコウモリはその人のおじいさんの生まれ変わりかもしれないわね。」
 尽きることのないエピソードと機転と笑顔。ガイドに携わる人は多くの知識を蓄えて、それぞれガイドの手法も個性的。なるほど、これだと笑って城巡りができそうだ。
 ガイドをやっていると、足を運んでくださったお客様から学ぶ事が多いとの事。何気なく訪れた地元の人が実は親戚が根城にゆかりのある人だと判明し、史跡の片隅に建てられた石碑の意味を再発見したり、県外からはるばるやってきたコテコテの城マニアが今まで知らなかった知識を披露していく。
 お客様から得た知識は新たに来たお客様へと広めていく。多くの人が思い思いのロマンを語り、またロマンに浸っていく。
 歴史や文化などと難しく考えたり学ぼうと肩肘張らずに、どうか根城に来て欲しい。と河村さんは言う。
 広場でピクニックと洒落込んでくつろぐも良し。考え事をしながら歩き回るも良し。枝垂れ桜や藤の花など四季折々に変わる花の色や、キレイに整えられた芝生の緑を楽しむも良し。運が良ければ生い茂る木々から、リスやサルが出て来る事もあるという。地元の人はもちろん、多くの人々に、この地を楽しんでもらいたい。
 城が建てられてから三百年、三度の攻城戦でも陥落することのなかった城は、今はガイドの力で、何度足を運んでも見所と魅力が尽きる事がない。
 「東門をくぐって芝生の広がる道を歩けば、馬淵川を渡って吹く風はお城が建てられた頃の中世と同じ。タイムスリップしたような気分で来てもらいたいの。」

取材に応えてくれた方

河村美知子(かわむらみちこ)/プロフィール

1952年生まれ。史跡根城の広場のガイドボランティアをして11年。母校根城小学校の校章と根城のお殿様の家紋が向い鶴であることに大人になって改めて気付き、興味を持った。元々歴史はあまり得意な方ではないが、トークとユーモアでお客様を楽しませている。

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取材と文

山本裕美(やまもとひろみ)/プロフィール

30代。はっちのガイドボランティアをしている。まちぐみ69号でもあり、役者でもあり、各種イベントスタッフでもあり、各種イベントに足を運ぶ人でもある。


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